電界百話(1934年)に接す 3

産業技術史
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空中電気の使用

こんにちは。Kiyotechです。

この本は、読むほどに様々な逸話が発見できます。

今日は前回に引き続き、興味深いお話を紹介します。

空中に発生する電気

まずは、冒頭の一節からご紹介。

「空中に電気が発生することは雷の現象で昔から分かつてゐたことであるが、その電気を利用しようといふ考へも可なり前から試みられたことである。(中略)(最近は)大きな雷のある際は高さ数十米位の空中と地球との間に数百萬又は一千萬ヴオルトにも達するやうな電□が起ることが分つた。(中略)(然し)之を普通の電燈電力の様な電圧、電流は小くても絶えず連続して使ふものに利用することは非常に難しい。」
※文中、仮名遣いは原文のまま、漢字の多くは常用漢字、判読不明の漢字は□としました。以下同じ。

つまり、雷の電気エネルギーを通常の電力として利用することは難しいということですね。

もっとも、その電気エネルギーを蓄える研究は随分となされてきたようですが、今日では大型の系統用蓄電池は存在するものの、超高電圧・大電流で短時間の放電を蓄える技術は皆無です。

とある相談

ここで、著者の渋沢元治氏にある相談が持ちかけられます。

「□て或る相当知識階級の人からかういふ相談をうけた。其の人の或る知人が独逸の専売権を得て伊吹山の絶頂に軽気球をあげて空中電気を利用する、たゞで電気を利用することが出来るから此の会社は非常に儲かる、その株に応募して呉れといはれるが、一体さういふことは学問上どんなものかと」

この話に、渋沢氏の答えは次のようなものでした。

「学者が斯様なことをうつかり否定すると、徒に発明者をくさすと誤解されるので誰でも困ることである。」とした上で、

「然し余り馬鹿らしく無謀な話であるから、その人が会得したかどうかは知らないが、大体空中電気の性質から、又之を利用する時代は来てゐない、(中略)空中電気とてたゞで出来る訳ではない。非常に費用がかゝる。斯様に説明してやつたら、その人は幸い応募しなかつたようであるが、あとで聞けば一の詐欺であつたとのことである。」

いつの時代でも

電界百話が著された昭和初期という時代は、各家庭に電灯が灯り、ラジオが普及していった頃です。

しかし、電気に対する世間の認識が一般的になりつつあった一方、当時の先端技術であった電気についての理論的解釈はごく一部の人に限られていました。

このことから、前述のような悪しきエピソードが生まれたのでしょう。

最近では太陽光発電を巡り、「電気代がかからなくなる」「売電で自己負担がない」といった甘言で、悪質な販売を持ちかける営業が横行しているようです。

結局のところ、時代が移り変わっても「夢の技術」を餌にした「うまい話」は後を絶ちません。

新しい技術ほど、その原理や限界を正しく理解できる人は限られています。

その隙を突くのが、いつの時代もいる「口のうまい人」たちです。

私たちができる最善の防御は、話の真偽を冷静に調べ、専門的な知見を持つ人の意見を聞くこと。

そして「無料で手に入る電気」や「絶対儲かる投資」といった甘い言葉には、時代を問わず一歩引いて考える姿勢が大切でしょう。

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