電界百話(1934年)に接す 2

産業技術史
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電気窃盗事件

こんにちは。Kiyotechです。

以前の記事で紹介した、電界百話。

今日は、タイトルのエピソードを紹介します。

明治期にあった盗電

まずは、ここで冒頭の一部から。

「明治三十五、六年の頃法曹界を賑したものに電気窃盗事件があつた。その事件の起りは明治三十四年の十一月頃、横浜市上町三丁目三十一番地藤村○○○が電気職工の吉田○○○なるものと共謀して、横浜電燈会社(後東京電燈会社に合併)から配電してゐる屋内電線に自ら針金を接続して、毎夜十燭の電燈を□け電気を窃取してゐたのであつた。此種の窃盗事件は他にもあつたので電燈会社でも捨て置き難く之を訴へたのである。
 此の訴訟事件は横浜地方裁判所に於て明治三十五年七月五日有罪と判決された。」
※文中、仮名遣いは原文のまま、漢字の多くは常用漢字、判読不明の漢字は□とし、また、個人名は伏字○として配慮しました。以下同じ。

このような盗電事件が、明治期に実際にあったのですね。

当時の人々の中にも、無償で電気を使用したいという悪しき願望を持った方がおられたようです。

判決と控訴

ここで、横浜電燈会社の訴えは一旦認められ、被告の吉田某たちは有罪となります。

続く有罪の理由には、「つまり民法では物は有体物ではあるが刑法上の物は必ずしも有体物でなくてもよいと云ふので有罪と判決したものと見える。」と記載されています。

しかし、被告はこれを不服として控訴します。

その結果、「然るに東京控訴院では明治三十六年三月二十日之を無罪として判決を下した」のです。

そして、次の理由が当時の電気に対する理解を物語っていて興味深い。

「人の所有物を窃取したるものは窃盗の罪となし云々と規定し而して同法草案に依れば他人に属する有体動産を窃取する云々とありて窃盗罪の目的物は有体物に限ると解釈するを至当とす。然るに理学博士田中○○○の鑑定に□れば電流はエーテルの作用に基因し有体の物質的物件なりと云うを得ずとあるに依り当院は此鑑定に基き電流は有体物にあらずと認む。故に電流は窃盗罪の目的物たるを得ず、従て之を□用したる所為は窃盗罪を構成せざるや勿論なり。」

刑法の改正

しかしながら、この判決は当時の我が国において発展を続ける電気事業にとって大きな脅威であったことでしょう。

そこで、「勝手に電線を取付け電気を窃取した者が無罪となつては電燈会社はたまつたものではない」として、大審院に上訴します。

結果、「明治三十六年五月七日矢張り地方裁判所と同様有罪の判決が下された」のでした。

さらに、「その後明治四十年四月刑法の改正に際して三十六章「窃盗及匕強盗ノ罪」の中第二百四十五條に「本章ノ罪二付テハ電気ハ之ヲ財物と看做ス」といふ條項が追加された」のです。

以来、今日においても電気については刑法245条で「電気は財物とみなす」と規定されていることから、電気を盗むことも窃盗罪に該当することが明らかとなっています。

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